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OIMO cafe 善福寺 大和田 一樹さん

はじまりはふかし芋
 東京・杉並区の善福寺公園そばの住宅街にあるOIMO cafe 善福寺は、埼玉県三芳町にあるサツマイモのカフェOIMO cafe 上富の2号店だ。上富店のスタッフだった大和田さんが、2019年3月、自宅のあるこの場所でオープンさせた。
 そもそも大和田さんがOIMO cafeに入ったのは、同店を運営する「むさし野自然農場」の代表・武田浩太郎さんと旧知の仲だったことがきっかけだ。大和田さんは中学生の頃から農場に遊びに行っていたが、そのときにおやつに出てきたふかし芋の味が、忘れられなかったという。
 その後、30歳を過ぎた頃に農場の手伝いを始め、のちにOIMO cafeのスタッフになった。

「芋IQ」が上がった?
 善福寺店の主要メニューは、厨房にある2つの大きな壺で焼く焼き芋。壺焼きは火が通るのに時間がかかるうえ、温度を一定に保つために途中で炭を追加するなど、温度管理も手がかかるが、それもまた楽しいという。
 取材時(2020年12月)は、4種類ある焼き芋の中から、ほくほく系の「むさしこがね」と、大和田さんおすすめの希少品種「あいこまち」をいただいた。「あいこまち」は初めて食べたが、皮のパリ感と身のしっとり感のバランスがよく、上品な甘さを楽しめた。最近は珍しい品種を求めるお客さんも多く、「お客さんの『芋IQ』が上がってきている」と感じるという。 

コロナが変えたもの
 ところで、筆者は今回の取材とは別に、2020年3月にこのお店を訪れている。その頃は緊急事態宣言こそ出ていなかったが、すでにコロナによるイベント自粛や休業が相次いでいた時期で、大和田さんも店を休むべきか悩んでいた。 
 その後の話を聞いてみた。「緊急事態宣言が出る前の3月末から、1か月半くらいお店を休んでいました。コロナ以前は海外からのお客様もよく来ていたんですが、それがパタッとなくなりましたね」
 焼き芋は近年、海外でも人気が高まっている。大和田さん自身も海外に焼き芋を広めたいと考えていた矢先だったというから、悔しさもあるはずだが「店を休んでいる間はずっと畑仕事や片付けをしていて、おかげで、ものすごくはかどりました(笑)」と、あくまで前を向いている。

お茶でほっこり
 もう一つ、このお店で目を引くのが、カウンターにある立派な茶釜だ。煎茶に抹茶、ほうじ茶と、お茶のメニューが豊富なうえ、レジのそばには無料サービスのほうじ茶まである。それもやはり、かつての農場での経験がもとになっている。「農場では、おやつの時間になるとみんな手を止めて作業場に集まってくるんです。そこでお菓子やふかし芋を食べたり、お茶を飲んだりしながら、畑のことから世の中のことまで、いろいろな話をしました。あんな風に、お芋とお茶でほっこりしながら、コミュニケーションできたらいいな、と」
 確かに、焼き芋とお茶をお供に大和田さんと話していると、何とも寛いだ気分になった。コロナ禍で不足しがちな温かさを、壺の中から分けてもらったようだ。


OIMO cafe 善福寺
東京都杉並区善福寺2-24-8
TEL:03-6454-7272
営業時間:水~日 12:00 – 18:00
定休日:月・火

 

 

※情報は『イモヅル』Vol.6掲載時(2021年2月)のものです。
 営業時間など最新の情報については各店舗のホームページ等でご確認ください。