売る人File.2
超蜜やきいもpuku puku 須藤 武士さん

焼き芋のイメージを覆す「超蜜」
 超蜜やきいもpuku pukuは、店主の須藤さんの実家のガレージで、冬期4か月間のみオープンする焼き芋専門店。それ以外の期間はイベントや催事への出店を行っているが、以前某イベントで早々に売り切れてしまっているのを目撃。そして2020年11月、恵比寿で開催された「YEBISU Marche」でようやく買うことができた。


 ここの焼き芋は、見た目がちょっと変わっている。まず、透明なパックに密閉されていて、芋からは、「超蜜」の名の通り、蜜があふれている。「新聞紙にくるまれたホクホクの焼き芋」のイメージを完全に覆す。 
 お皿にあけてスプーンを入れると、冷たいままなのに硬くない。身はアイスクリームのようにしっとり、ねっとりしている。蜜は添加したものではなく、サツマイモから引き出したものだから、甘みはしつこくなく、すっきりしている。

 
 それにしても、こんなニュータイプの焼き芋を作っているのは、一体どんな方なのだろうか。店主の須藤さんに話を聞いてみた。

10年以上の研究の成果
 須藤さんは、もともと農業を専門的にやっていたわけではなかったが、知人から畑を借りたことがきっかけで、サツマイモの栽培を始めた。サツマイモなら生産から加工、販売まで「顔の見える」商売ができると考えたのだという。焼き芋は、最初は公園や商店街で売っていたが、2009年から、実家のガレージで売るという現在のスタイルになった。
 そして、それから実に10年以上、「芋を甘く焼く」ことをひたすら追求し、様々な品種、温度、焼き方を試し続けている。その執念、さぞ甘い焼き芋がお好きなのかと思ったら、違った。「『超蜜やきいも』を作っておいてあれですけど、ぼく自身は、そこまで甘い焼き芋が好きなわけじゃない。むしろ、ねっとりとホクホクの中間くらいの、中庸な味のほうが好きなんです」
 須藤さんにとって、サツマイモは「研究対象」だという。個人の嗜好と切り離した考え方が面白い。話していると、何となく「哲人」という言葉が浮かんできた。
 とはいえ、もちろん単に研究対象としてだけ見ているわけではない。
 「サツマイモは、地域によってそれぞれ異なる味や食べ方があるし、焼き芋にしても、値段も敷居も高いものから、スーパーで売っている庶民的なものまで幅広い。これはひとつの文化だし、各地の文化が横につながれたら、もっと面白いと思います」

サツマイモで仲良くなれる
 最後に、焼き芋を売る中で感じる「よろこび」について教えてもらった。
「ありがたいことに、高校時代の同級生や常連さんが、店を手伝ってくれるんです。そうすると、フリでも一生懸命やらなきゃいけない(笑)。あとは、サツマイモを通して色々な人と仲良くなれることですね。『サツマイモが好き』という共通点さえあれば、考えの違う相手とも楽しく会話できますから」

 「超蜜やきいも」は、焼き芋のスタイルとしては斬新かもしれない。けれど、須藤さんがその先に見ているものは、人のつながりや文化のつながりという、ごく根源的でベーシックなものなのではないか。そう感じた。


超蜜やきいもpuku puku
東京都品川区西大井2-5-15
店舗営業は12~3月の金土日月のみ
営業時間:10:00-20:00(売切次第終了)
https://pukupuku-yakiimo.stores.jp/

 

 

 

※情報は『イモヅル』Vol.6掲載時(2021年2月)のものです。
営業時間など最新の情報については各店舗のホームページ等でご確認ください。