【Report】日本最大級のサツマイモの祭典
「さつまいも博2023」

 2023年2月22日(水)~26日(日)の5日間、さいたまスーパーアリーナ・けやきひろばで「さつまいも博2023」が開催されました。
 3回目となる今回は、全国から過去最大となる26店が出店。前回以上の盛り上がりを見せていた会場の模様をお伝えします。

chapter 1 寒い!でも楽しい!

 筆者は通常の会期中に加え、メディア向けの試食会が開催された21日(火)にも参加。例年のこととはいえ、今年もやはり寒さに苦しむことになりました。特に、21日(火)のさいたま市の最高気温は7.2℃、風速は最大8.7m/sで、簡単に言うと極寒激風。真冬の屋外イベントの宿命とはいえ、手の感覚もなくなるほどの寒さの中、連日働き続ける出店者とスタッフの皆さんには、本当に頭が下がります。同時に、寒さに耐えながら列に並ぶお客さん達にも、謎の連帯感を感じてしまいます。
 要は寒くても楽しかったのです。ということで、まずは思い出プレイバック。会場内のギャラリーをどうぞ。 

▲「芋売る人々」でもおなじみ「超蜜やきいもpukupuku」店主の須藤さんによる超蜜デモンストレーション

chapter 2 品種も産地も多種多様

 昨今の焼き芋ブームを引っ張り、イベントでも花形的な人気を誇る品種といえば、なんといってもべにはるか安納芋(安納こがね、安納紅)でしょう。しかし、今回会場を回っていて、その2つは変わらず人気でありつつも、品種の多様性が増したような印象を受けました。中でもシルクスイートの存在感は大きく、焼き芋の主力メニューとして押し出す店舗が増えたように感じます。また、紫芋としては糖度が高く、ねっとりとした食感も楽しめるふくむらさきも、じわじわと知名度を上げてきています。個人的には、焼き芋向きのおいしい品種でありながら、育成の難しさからあまり普及しないべにまさりを目にする機会が増えたことに、喜びを感じました。
 また、今回の「さつまいも博2023」のテーマは「産地」でした。出店店舗が使用するサツマイモは、鹿児島や茨城、千葉などの主要産地だけでなく、秋田や新潟、島根など、これまであまりサツマイモのイメージがなかった産地でとれたものも多数。サツマイモが地域のブランド力を押し上げる農産物として、注目を集めていることがわかります。

▲新潟から参加の「さつまいも農カフェきらら」。焼き芋には新潟県産かみのいも(べにはるか)を使用。

chapter 3 「甘い」だけじゃない!

 もう一つ、今回会場を見ていて感じたのは、「食べ方」の多様化でした。
 サツマイモといえば焼き芋や干し芋、スイーツなどの甘いメニューが大多数を占めていました。しかし今回の「さつまいも博2023」では、「甘い」だけではないサツマイモの魅力を引き出そうと、サツマイモ料理に特化した「#さつまいもおかず部」なる企画を立ち上げ、プロの料理人によるレシピの提案、クッキングライブなどが行われました。また、ほかの出店者を見ても、カレーやグラタンなど「しょっぱい系」のメニューが増えたように感じます。
 筆者も「#さつまいもおかず部」のブースにてさつまいも豚汁を試食。甘いサツマイモと味噌が溶け合い、奥行きがありながらも落ち着く味わいでした。サツマイモに足りないたんぱく質を豚肉で補うことができ、栄養面でもナイスバランスです。

 

chapter 4 「食べる」だけじゃない!

 「さつまいも博」の特徴といえば、サツマイモの栽培や歴史などにスポットを当てたさまざまな企画により、食べる以外の楽しみ方を提示しているところです。

①日本さつまいもサミット

 エントリーされた全国の農家の中から、審査を経て「ファーマーズ・オブ・ザ・イヤー」と「さつまいも・オブ・ザ・イヤー」を決定する企画です。受賞した農家は「さつまいも博2023」の会場で表彰されるほか、受賞したサツマイモ(生芋)の販売も行われるなど、普段なかなか意識することのない、生産者に目を向けるきっかけになっています。

▲受賞したサツマイモの販売ブース

 受賞農家の表彰式は、2月25日(土)に会場内ステージで行われました。

 ファーマーズ・オブ・ザ・イヤー 2022-2023年度 受賞
  JAなめがたしおさい TEAM FUTURE(茨城県行方市)/石間 裕介 氏
  北の杜FARM(山梨県北杜市)/保坂 香里 氏
  株式会社アグリ・コーポレーション(長崎県五島市)/佐藤 義貴 氏
  株式会社なかせ農園(熊本県菊池郡大津町)/中瀬 靖幸 氏
  株式会社喜郷ファーム(宮崎県延岡市)/梅田 学宏 氏

▲ファーマーズ・オブ・ザ・イヤー受賞者

 さつまいも・オブ・ザ・イヤー 2022-2023年度 受賞
  べにはるか:サザンカ営農組合(宮崎県宮崎市)/川越 義正 氏
  シルクスイート:市毛農園(茨城県鉾田市)/市毛 誉 氏
  安納べに:長崎五島ごと(長崎県五島市)/木下 秀鷹 氏
  その他 べにあずま:Koike lab.(岐阜県中津川市)/小池 菜摘 氏
  その他 安納黄金:砂坂 展恵 氏(鹿児島県熊毛郡中種子町)

▲さつまいも・オブ・ザ・イヤー受賞者

②さつまいも頂上決戦

 その表彰式に続いて行われたのが「さつまいも頂上決戦」です。
 べにはるかの生みの親で、さつまいも博の名誉実行委員長を務める農学博士・山川理さんが育てたサツマイモと、「日本さつまいもサミット」受賞農家のサツマイモの焼き芋を食べ比べ、どちらがおいしいかを決する企画です。
 審査をするのはプロの料理人、サツマイモの情報を発信するライターやインフルエンサーなど10名で、僭越ながら私もその中に混ぜていただきました。

【決戦1 べにはるか対決】
・山川名誉実行委員長のべにはるか VS さつまいもオブ・ザ・イヤー受賞
 SAZANKAFARM/サザンカ営農組合(宮崎県宮崎市)のべにはるか

【決戦2 その他品種対決】
・山川名誉実行委員長の安納べに VS さつまいもオブ・ザ・イヤー受賞
 シルクスイート:市毛農園/市毛 誉(茨城県鉾田市)
 安納べに:長崎五島ごと(長崎県五島市)
 安納黄金:砂坂 展恵(鹿児島県熊毛郡中種子町)

 審査は、ステージ上で数種類の焼き芋を食べ、最もおいしかったものを札で示すという方式でしたが、正直どれもおいしくて、相当悩んで決めました。 
 結果は、どちらの決戦も山川名誉実行委員長の勝利!でした。

▲こんな感じで審査しました

③IMO PROJECT

 IMO PROJECTは、東京大学の学生を中心に結成された学生団体で、パネル展示、さつまいも検定、おいもクイズラリーなどの学べる企画を多数用意していました。その中でも、目玉は「さつまいも博物館」。けやきひろば1階、スターバックスコーヒーの目の前の通路にサツマイモ(生芋)が一直線に並ぶ様子は、昨年も書きましたが狂気です。気になる品種があれば、IMO PROJECTのメンバーが解説してくれるという高ホスピタリティー。


 
 さらに、IMO PROJECTブースでは、サツマイモ27品種の断面がデザインされたおいもトランプなどのオリジナルグッズが販売されていました。これを使って夜通し大貧民などやったら、さぞカオスでしょう。ブースに貼られた、妙に生活感あふれるサツマイモのイラストも、いい味出してました。

chapter 5 栄冠は誰の手に?グランプリ発表!

 来場者の投票と実行委員会の審査によって決まる恒例企画「全国やきいもグランプリ」。今年のチャンピオンは、なんと2020年に続く2冠!「神戸芋屋 志のもと」さんでした。

 全国やきいもグランプリ2023 

  チャンピオン 神戸芋屋 志のもと
  山川名誉実行委員長賞 超蜜やきいもpukupuku
  さつまいも特選農家賞 やきいも 農家の台所
  ヤクルト賞 日比焼き芋-TOKYO HIBIYAPARK-
  霧島酒造賞 蜜芋処 えんむすび
  さつまいも博実行委員会賞 COEDO HACHI

また、グランプリとは別に4部門での人気投票も行われました。

 私が好きな「冬いもスイーツ」部門
  第1位 焼き芋ブリュレ(COEDO HACHI)
 これからバズりそう「ネクストブレイク」部門
  第1位 焼き芋ブリュレ(COEDO HACHI)
 写真を撮るならこれだ「映え」部門
  第1位 焼き芋ブリュレ(COEDO HACHI)
 幸せのおすそ分け「おみやげ」部門
  第1位 バター焼き芋カレー(日比焼き芋-TOKYO HIBIYAPARK-)
 
 グランプリおよび人気投票の結果の詳細は、さつまいも博公式サイトに掲載されています。
 https://imohaku.com/

chapter 6 忘れがたき芋々 3選

 最後に、今回の出店メニューの中で、筆者の心に特に強く残ったものを3つ紹介します。

1.シルクスイート/倉田屋お芋Sweets
 大正10年創業の、和菓子と壺焼き芋のお店。伝統の製法で、生芋から焼くことにこだわっています。壺焼きのシルクスイートは水分の抜け具合がちょうどよく、シルク特有の上品な甘さとともに、昔ながらの焼き芋らしい、しっかりとした食感も。「しっとりなめらか」だけではない、シルクスイートの新たな魅力を引き出す職人技に、感服しました。


2.限界まで蜜芋いれたスコーン/熟成焼き芋Land &POTATO

 群馬県大泉町に店舗を構える焼き芋店。独特のメニューやディスプレイで異彩を放つお店ですが、その味からはむしろシンプルで丁寧、かつストイックな印象を受けます。このスコーンもネーミングに偽りなく、隅々まで芋で満たされ、スコーン部分もちゃんとおいしく、満足度の高い一品でした。


3.シモン芋/よっしーのお芋屋さん。

 2022年5月に横浜から長野・駒ケ根に移転した、イベントなどでも人気の焼き芋店。他ではあまり見ないようなさまざまな品種を取り揃えており、今回のさつまいも博では希少品種「シモン芋」が登場しました。ジャガイモのように白く、ホクホクしていますが、すっきりした甘さも健在。食べ飽きない味です。

▲店主のよっしーさんとシモン芋

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です